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12 Important Works12研究物語

FILE4

SJS/TEN 眼障害の臨床研究と遺伝子多型(発症素因)および病態の解析

京都府立医科大学がSJS/TEN 研究の
国際拠点になる夢に向かって

研究担当者

  • 外園 千恵

    講師

  • 上田 真由美

    客員講師
    同志社大学生命医科学部炎症再生医療研究センター
    准教授

どうしても治らないSJS を『何とかしたい』と考え続けた日々

 スティーブンス・ジョンソン症候群(以下SJS)による視力障害が何をしても治らず、1995 年頃に当科で実施した移植も最初は経過良好でしたが、説明のできない炎症により、結局視力が低下しました。突然発症した本疾患による失明は、患者さんの人生を変えてしまいます。「患者さんに接するうちに、どうしても治らないSJS を『何とかしたい』と強く思いました。そして、2001 年頃に、医薬品被害救済機構の研究公募で、当教室からSJS に関する研究で応募しようということになり、この病気を治すためのアプローチを1 か月くらい、これ以上考えら れないというほど、考え続けました。それがSJSと中毒性表皮壊死症(以下TEN)の研究を始めた具体的なきっかけです」と臨床研究を担当されている外園千恵先生は語ります。

理解してもらえないほど先端の研究をしている! 

 遺伝子多型(発症素因)と病態の解析を担当している上田真由美先生は「大学院の時に、粘膜免疫ならびに粘膜における自然免疫を学び、粘膜における自然免疫の異常によって生じる眼表面炎症性疾患はないかと考えていたところ、眼障害を伴うSJS/TEN がそれだと気づきました。その頃、眼科では自然免疫について全く知られておらず、学会発表をしても、ほとんどの人が理解してくれませんでした。遺伝子解析により眼障害を伴うSJS/TEN に自然免疫応答の異常が関与していることが示唆された時でさえ、それを理解してくれる人は、ほとんどいませんでした。自分の行っている研究が本当に価値のあるものかわからなくなってしまうこともありましたが、その都度、木下教授に『人より先端の研究をしていると理解してもらえないものだ、それだけ人より先を進んでいるのだから素晴らしい』と励ましてもらいました」と語ります。

苦労したのは研究費の獲得と病気の認知度アップ

 研究を進める中で苦労したことについて外園先生は、「臨床疫学解析を行ううえで、全国からデータをできるだけ多く 集めることが大変でした。協力依頼を行いながら、この病気の周知をはかりました。さらに難しかったのが、研究費の獲得です。研究申請書を厚労省に出し続け、だんだんと評価点が上がるのですが、5度目の評価点は大変よかったのですが、『この病気は研究班(私も分担で参加)がすでにあるので、新たな助成はできない』という通知で不採択でした。評価点が高いのに、不採択なのはおかしいと、疾病対策課に手紙を出しました」。研究以外の苦労が大きかったのですね。

 そんな先生方の努力が実って、NHKの『クローズアップ現代』という番組でもSJS/TEN が取り上げられました。


NHK クローズアップ現代 身近な薬の落とし穴 警告!「市販薬」の意外な副作用
(2012 年11月19日. 放映)

海外に主導権は取らせない!の意気込み

 「現在が最も楽しくやりがいがある時期です。私たちの研究内容が国際的に認められ、国際共同研究を広く行うことができるようになっています。いろいろな国の人と会ってお話をしますが、みな思いは同じで、SJS/TEN を発症して重篤な眼後遺症で苦しんでいる患者を何とかし たいという志を持っています。言葉は異なっていても、海外の共同研究者を大変身近に感じます」(上田真由美先生)

 「海外でもこの研究が進むといいと思いますが、木下先生から『主導権を取られないように』と言われたことが印象に残っています。大事なことだと気づきました」(外園千恵先生)

 今後の研究の展望について、外園先生も上田先生も口をそろえて次のように言います。「京都府立医科大学が、SJS/TEN 研究の国際拠点になること」(外園千恵先生)、「木下教授が率いる京都府立医科大学が、SJS/TEN 研究の国際拠点になることです。おそらく実現しますよ(笑)」(上田真由美先生)

原点はやはり木下茂先生だった

 「やはりSJS/TEN 研究の原点は木下教授です。私は、京都府立医科大学に来るまで、SJS/TEN 患者さんを診たことはありませんでした。大変まれなSJS/TEN 患者さんが多く京都府立医科大学を受診してくださっているのは、木下教授が長年、適切な治療法がなかったこの難治性疾患を診療し、新しい治療法を開発し、患者様に提供されてきたからだと思っています。また、海外に出ても同じです。SJS/TEN 患者を診療している眼科医の多くは、木下教授が開発してきた新しい治療法を実践しています。海外に出ても木下教授の名前は角膜専門医なら誰でも知っており、そのおかげで国際共同研究を広げることができています」(上田真由美先生)

発症させないための遺伝子研究 発症しても重症化させない治療法

 この研究チームの成果によって、失明を回避する、あるいは失明を克服する糸口が見出されました。上田真由美先生は「私はこの病気を発症させないために、遺伝素因をもとにした発症予測の研究を進めています。4日以内にステロイドパルスを行うと視力予後が良いというデータがあります。遺伝素因がわかれば、もし発症しても、早期診断・早期治療が可能となります」。また外園千恵先生は「培養口腔粘膜上皮シート移植や、教室で開発した輪部支持型コンタクトレンズにより、視力改善を得られるようになりました。これらの新しい治療法で視覚障害を克服できれば、患者さんの将来が広がります」 と抱負を語ってくれました。