12 Important Works12研究物語

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眼粘膜上皮と自然免疫系の調節

その先に創薬というダイヤがあると信じているから
眼粘膜上皮と自然免疫というニッチな研究を続けられた

研究担当者

  • 上田 真由美

    客員講師
    同志社大学生命医科学部炎症再生医療研究センター
    准教授

  • 羽室 淳爾

    特任教授

眼の粘膜上皮での免疫応答と炎症に興味がわく

 眼粘膜上皮と自然免疫系の調節の研究をスタートしたきっかけについて、上田真由美客員講師は「私が大学院の時に、粘膜免疫を学び、上皮細胞が炎症を制御することを知りました。その機構を解析することに興味を持ち、さらに、治療薬への応用を考え、薬学部の先生と共同研 究を行うことにしました」と当時のことを振り返ります。

孤立無援の中での凄まじい情熱

 この研究をスタート時点からサポートしていた羽室淳爾特任教授は「木下教授の研究室と御縁を頂いた最初の視覚再生フロンティア研究会のことでした。上田先生の自然免疫(常在菌との共生による恒常性維持)に対する、孤立無援の中での凄まじい情熱を目の当たりにしたときの記憶は、今でも鮮明です。免疫を専攻にする私自身にも、大きな衝撃でした」と話します。その衝撃的な上田先生の自然免疫をテーマとした研究への情熱に心を動かされて、羽室特任教授は良き助言者として上田客員講師を支えたそうです。「携わったと申し上げると叱られるかもしれませんね(笑)。上田先生が本分野の研究を始められる際の手ほどきと、『こうするのですよ』ではなく、『こうはしない方がいいですよ』という正しい助言をしました」。

診療科や大学を越えた共同研究がスタート

 上田真由美客員講師の先見の明と情熱が実を結び、診療科や大学を越えた共同研究が始まりました。「3、4年前からは皮膚科と共同研究を行い、皮膚科の大学院生が本研究と関連した内容で学位論文を作成し、今年の青蓮賞を受賞しました。上皮細胞を標的とした新規抗炎症薬についての創薬については、京都大学薬学部の奥野恭史教授と共同研究を行っています」。(上田真由美客員講師)

一念発起! 40歳で薬学を勉強し直す

 研究を進めていく中で苦労したことについて「免疫学的解析については、大学院の時に学んだ知識で行うことができました。けれども、薬学部の先生と一緒に共同研究を始めたとき、お互いの会話が通じないのには困りました。お互い使用する専門用語が異なり、知っていて当然と思っている用語が、お互いに理解できませんでした。この現実を前に一生懸命に知識を蓄える努力をしましたが、40歳になって薬学を勉強し直すとは思ってもみませんでした。

薬は製薬会社や研究者のとてつもない努力の結晶と実感

 また、順調に共同研究が進み、東京大学で紫綬褒章をもらったことのある著名な薬学部の教授とお話しする機会にも恵まれました。その先生に『創薬はダイアモンドを掘り当てに行くものだ』と言われて、これはやめなければ…と思った記憶があります。しかし現実は、やめなければと思いながらも、公的研究費を獲得しつつ、細々と研究を継続しています」と上田真由美先生は話します。

 研究を続ける中で勉強になったのは、製薬会社の創薬担当者と接する機会に恵まれたことだそうです。

 「医者の立場ではなく、研究者の立場になると、何と製薬会社は大きいものかと感じます。当然のように使用しているお薬が、製薬会社や研究者のとてつもない努力の上でできていることを実感する機会を得ることができて良かったと思います」。(上田真由美客員講師)

木下 茂教授の実業家としての手腕も学びたい!

 木下 茂教授について上田先生は、「木下先生は大学の教授ではありますが、この研究を通じて木下 茂教授の違った側面、やり手の実業家としての側面を垣間見ることができました。企業に対しては、医師としてのお顔もお見せではありますが、おそらく時折は、患者さんに役立つ研究を行う後ろ盾を確保するために、実業家としてのお顔を見せていると感じています。木下教授が、実業家としてどのような考えを持って行動されるのかを学ぼうと思っても、なかなかその姿を見せてくれませんが、それでも時折、木下教授の実業家ぶりを見ることができたと思います。でもまだまだ勉強不足なので、これからも私は必至で木下先生のビジネス手法を学ぶために観察を続けていこうと思います」と上田真由美客員講師は語ります。

新展開を期待

 羽室淳爾特任教授は「もっとも心に残る研究で、上田先生のご努力が報文の形で、さらには研究資金獲得の形で実っていく過程を目の当たりにできたことをうれしく思います。木下先生の粘り強いご指導と、高所、大所から、陰に日向にと、研究の方向性に関する広範な指導と共同研究者の開拓に向けた努力には感心しました。自然免疫、自然炎症は眼表面、内皮面、網膜下などの難病疾患にことごとく関係していると思います。もっとたくさんの研究者を呼び込んで、研究を発展させることに期待します。」と話します。

 最後にこの研究の展望に関しては「最近ある製薬会社がこの研究に興味を持ってくれるようになり、一緒に研究を行える可能性が出てきました。まだどうなるかはわかりませんが、無理のないようにではありますが、私は未だに捨てられない、ダイアモンドを掘り当てる夢に向かってまた歩いて行けるのでは…と淡い期待を抱いています」。(上田真由美客員講師)


【木下茂教授と上田真由美客員講師】