
この研究グループの研究内容について、鈴木智先生は「健常者のマイボーム腺分泌脂( 以下meibum)に含まれる常在細菌と、マイボーム腺異常患者のmeibum に含まれる細菌を明らかにし、治療を確立することです。また、健常者とマイボーム腺異常患者の脂質分析を行い、両者の違いを明らかにするとともに、治療へと結びつけることも重要なテーマの一つです。さらに、性差および加齢性変化などにも注目しています」と説明します。
さらに横井則彦先生も「この研究によって、角膜上の涙液油層の役割を涙液油層の粘弾性特性の観点から解明し、ドライアイやマイボーム腺機能不全の診断や治療に役立てることを目的と考えています」と話します。
研究のきっかけになったのは「1997年にOxford から持ち帰ったアイデアをもとに企業との共同研究でビデオメニスコメータを完成させて、涙液貯留量を評価できるようになり、涙液貯留量と涙液油層の動態の関係を解析した結果、ドライアイと健常眼をスクリーニングしたり、 ドライアイの重症度を評価する上で、涙液油層観察像のパターン分類よりも油層の伸展動態の方がより重要であることに気付いたこと」(横井則彦先生)。
鈴木智先生は「大学院時代に『角膜フリクテン』を臨床研究のテーマに選び、そこから『マイボーム腺炎角膜上皮症(MRKC: meibomitis-related keratoconjunctivitis)』という疾患概念を提唱し、さらにマイボーム腺と眼表面を一つのユニットとして考えるMOS (Meibomian glands and Ocular Surface)という概念を提唱するに至りました。meibum の細菌および脂質組成の変化がMOS に大きく影響していると考えたためです」と説明してくれました。