
この研究チームのテーマについて渡辺彰英先生は「高速瞬目解析装置を用いて測定した瞬目データを解析し、パーキンソン病をはじめとする脳神経疾患患者と健常者で比較して違いを発見することです。そして、その解析したデータを用いて、スクリーニングへの応用を目指すことを目標にしています」と説明します。パーキンソン病は、脳の黒質にある神経細胞が変性し、そこで作られる「ドパミン」という神経伝達物質が減少することで、運動指令がうまく伝達されずに、震えや歩行障害などの運動症状や、不眠、うつなどの非運動症状が生じる疾患で、瞬目も補助的診断に用いられています。神経学的所見では、患者さんに目を左右上下に動かしてもらったり、瞬目の観察も要素に含まれてはいますが、明確な基準値などは規定されていません。
「平成元年から、眼精疲労の他覚的検査として『調節・瞳孔解析装置(ニデック社製 AR3-SV6)』を用いて、調節波形、調節安静位及び瞳孔運動の計測と解析を行ってきました。平成18 年に明治製菓との共同研究が始まり『目の生理的な疲労』の指標とするために、『調節安静位』を超高精度に計測するという課題をいただきました。そのために行ったのが、測定した調節の時系列データから『瞬目により閉瞼している部分のデータ除去を除去する』という作業です。測定時の動画を見ながら、瞬目の開始と終了時間をチェックしていきました。一回の検査で5~20回位の瞬目が入ってきますので、合計で数百回の瞬目を観察しました。その時『閉瞼は時間が短く、開瞼は時間が長い』ことに気づき『上眼瞼の閉瞼速度は開瞼速度より速いようだ』と感じたのが、新しい瞬目解析装置の開発に繋がりました」と中村芳子先生は説明します。